検定試験の内容と判定
学科試験
- 学科試験の内容
学科試験は筆記試験とし、その内容は次の事項について行います。
(1)鉄鋼に関する知識
(2)電気に関する知識
(3)スタッド溶接
(4)溶接施工(施工・試験・検査・補正)
(5)安全衛生 - 学科試験の実施
試験時間は60分。採点は、検定委員または検定委員の委託を受けた試験員が行います。 - 学科試験の判定
100点満点中70点以上が合格となります。
実技試験
- 実技試験の内容
(1)資格種別毎の試験片の種類と数量
実技試験の溶接姿勢、スタッドの呼び名(軸径)および試験片の数量は以下の表のとおりです。実技試験 級 資格の種別 溶接姿勢 スタッドの呼び名(軸径) 試験種類および片数 基本級(下向) A級 下向き 22 引張試験および
各5本
曲げ試験専門級(全姿勢) B級 横向き 16 下向き 22 専門級(太径) F級 下向き 25
(2)スタッド
試験に使用するスタッドは、JIS B 1198に規定されたものとします。
(3)試験片形状・寸法
試験片形状・寸法 (単位:mm) スタッドの呼び名(軸径) t W ℓ 鋼 板 16・22 16以上 80以上 150 SN400
SN490
SM400
SM490
SS40025 19以上
(4) 試験方法
引張試験および曲げ試験方法の例は、図-2および図-3となります。引張試験では、引張試験機により加力し、試験片を破断させます。その際の加力速度は、加力開始から破断までの時間が概ね1~2分程度になるように行います。曲げ試験では、スタッド頭部をハンマー打撃により試験片を30度まで曲げます。図-2 引張試験方法の例 図-3 曲げ試験方法の例
(5)判定基準
●外観試験は全試験片のスタッド溶接部について行います。判定基準は以下の表の通りです。
外観試験判定基準 注) 欠陥 判定基準 カラー(フラッシュ)
の不整カラー(フラッシュ)は全周にわたり包囲していること。カラー(フラッシュ)は高さ1mm、幅0.5mm以上のものをいう。 クラック
(ひび割れ)スタッド軸部または母材にクラックがあってはならない。ただし、カラー(フラッシュ)表面のクラックは判定の対象とはしない。 アンダカット スタッド軸部または母材にするどい切欠き状のアンダカットおよび深さ0.5mm以上のアンダカットがあってはならない。 仕上がり高さ 呼び長さ(ℓ)±2mm以内 傾き 5度以内
●引張試験の結果、スタッド軸部で破断したスタッドを合格とします。
●曲げ試験の結果、スタッド軸部または溶接部に割れが発生していないスタッドを合格とします。ただし、カラー(フラッシュ)の割れおよびカラー(フラッシュ)と軸部との隙間は合否判定の対象としません。
●外観試験、引張試験、曲げ試験とも全数合格をもって実技試験合格とします。
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デッキ貫通溶接に対する規定
デッキ貫通試験はなくなり、事前教習で講習します。
実技試験の実施方法
- 実技試験前の準備
(1)試験員が受験者名簿を作成し、検定委員の承認をうけます。
(2)受験者は全員名札を付けていただきます。
(3)検定委員は名簿と名札により、受験者の確認を行います。
(4)受験者の希望により、事前に実技練習を行うことができます。
- 試験片の作製
(1)試験場の溶接する場所には、検定委員、試験員を除き、受験者と試験補助者以外は入れません。
(2)受験者は、名前を呼ばれたら溶接する場所に入ってください。それ以降、受験者は誰からもアドバイス を受けることはできません。
(3)受験者は、溶接機、ガンの設定をしてから、溶接の出来映え確認や機器の微調整のために試し溶接をすることができます。
(4)受験者は、試験片作製の準備が完了したら試験に入る旨を検定委員に宣言してください。
(5)その後、受験者は引張試験および曲げ試験用の試験片の作製を開始してください。
(6)受験者は、不良溶接をしたと自ら判断した時は、受験者自身の申し出により検定委員の了解を得て溶接の打ち直しをすることができます。ただし、再溶接はスタッド軸径毎に最大5本までとします。
(7)試験片作製中であっても、受験者自身の申し出により検定委員の了解を得て、スタッド軸径毎に最大3本までの試し溶接をすることができます。
(8)受験者は、試験片作製が終了したら、その旨を検定委員に宣言し、溶接機、ガンを初期設定 に戻してください。
(9)実技試験中に停電、溶接機等の故障、その他不可抗力の事故が生じた場合、検定委員の判断によって試験のやり直しをすることができます。
- 外観試験、引張試験および曲げ試験の実施
(1)外観試験は、検定委員または試験員が行います。
(2)引張試験および曲げ試験は、外観試験で合格した試験片に対して行います。
(3)引張試験における引張試験機操作は、試験員または試験員から委託された者が行います。
(4)曲げ試験における打撃作業は、受験者が行うのが原則となります。
なお、専門級(全姿勢)の横向き溶接試験片については、溶接時に上側となった側が引張となるように打撃曲げ試験を行います。
- 実技試験の判定
検定委員が実技試験の合否を判定します。
- 再試験
外観試験で、不合格スタッドが10本中3本以内であれば、再試験を受けることができます。10本中4本が不合格であれば、その時点で実技試験は不合格とします。再試験では、不合格スタッド1本につき2本の試験片を作製します(作製できる試験片は不合格スタッド1本につき2本までとします)。その全数が合格した場合に外観試験合格とし、その半数を引張試験または曲げ試験に使用します(両試験は5本ずつ)。
引張試験または曲げ試験において不合格スタッドが発生した場合は、それぞれ倍の試験片(10本)を作製して再試験を受けることができます。その全数が合格した場合に、実技試験合格とします。
なお、再試験は試験当日に引き続き行います。ただし、臨時試験等で試験当日に再試験できない場合は、後日実施することができます。
- 試験の記録
試験の記録として、外観試験、引張試験、曲げ試験結果に加えて、受験者ごとに「溶接中」および「試験後(受験者と試験片)」の写真を残します。
試験用機器
- 実技試験に用いる溶接機器は、原則としてスタッド協会が準備したものとします。なお、引張試験機は校正期間内であるものを使用します。
試験結果の判定
- 判定者
技術検定試験結果の合否判定は立会の検定委員が行います。 - 判定の種類
技術検定試験結果の判定は下記の3種とします。
(1)合格
1.基本級資格取得試験では学科試験ならびに実技試験の判定基準を満たした場合。
2.更新試験または専門級資格取得試験では実技試験の判定基準を満たした場合。
3.再試験において実技試験の判定基準を満たした場合。
(2)不合格
1.基本級資格取得試験では学科試験、実技試験のいずれか一方が判定基準を満たさない場合。
2.更新試験または専門級資格取得試験では実技試験が判定基準を満たさない場合。
(3)失格
1.不正行為があった場合。
2.虚偽の申請をした場合。 - 技術検定試験の実施記録
学科試験の答案は1年間、技術検定試験記録は6年間スタッド協会で保存します。